ごあいさつ
食品輸出の際に必要なラベルには、各国・地域で定められたさまざまな表示規則があります。そしてこれらの規則は日々更新され、変化し続けています。
本コラムでは、すでに食品輸出に携わっている方はもちろん、これから輸出に挑戦しようと考えている方、日本食の海外展開に興味をお持ちの方に向けて、食品表示規則を中心に、食品輸出にまつわる旬な情報をお届けしてまいります。
第一回となる今回は、日本を除く主要国における変更点を国別に箇条書きでまとめ、サマリーとしてご紹介します。
なお、各トピックの詳しい内容については、リンク先の国別ページにて順次ご紹介してまいります。
サマリー
2025年度以降、世界の食品表示規則は大きな変革期を迎えています。特に欧米、中国、カナダといった主要国では、消費者への情報提供や健康・安全重視の観点から制度変更が続々と施行されています。
カナダ
●フロント・オブ・パッケージ(FOP)栄養表示の義務化
2026年1月1日以降、包装済み食品のうち「飽和脂肪」「ナトリウム」「糖類」のいずれかが基準値を超える製品には、パッケージ前面に警告シンボル(FOP栄養表示ラベル)を表示することが義務付けられます。
このラベルには、虫眼鏡マークとともに「HIGH IN SUGAR」「HIGH IN SODIUM」「HIGH IN SATURATED FAT」といった栄養素ごとの明瞭な警告文言を記載する必要があります。



●原材料表示の制度改正
同じく2026年1月以降、原材料リストの視認性基準が厳格化されます。
一般的で消費者が理解しやすい呼称で記載すること、明瞭なフォントで表示することが求められます。
糖類は「Sugars(砂糖類)」としてまとめ、括弧内に個別の糖名を重量順で列挙する必要があります。
アメリカ合衆国
●フロント・オブ・パッケージ(FOP)栄養表示の新提案
2025年1月に、FDAが包装食品を中心にFOP栄養表示を義務化する新ルール案を発表しました。
その内容は、特定の栄養素(飽和脂肪・ナトリウム・添加糖)について、1食分あたりの%DV(1日の摂取基準値に対する割合)に基づき、「Low」「Med」「High」の3区分でパッケージ前面に明示するというものです。
現在はパブリックコメント期間中で、意見募集終了後に最終案が策定される予定です。最終的なルールが決定・運用開始となれば、大企業は3年以内、中小企業は4年以内に新制度への対応が求められる見込みです。
●アレルゲン表示
2025年1月版のFDA「食品アレルゲン表示規則に関するQ&A(第5番)」とその他関連文書が最終公開され、ココナッツが主要アレルゲンリストの「ナッツ類(tree nut)」から除外されました。
中国
2025年3月に、「包装済み食品の表示に関する一般規則」(GB 7718-2025)と「包装済み食品の栄養表示規則」(GB 28050-2025)が正式発表されました。2027年3月16日に施行される予定です。主な変更点は以下の通りです。
●アレルゲン表示、栄養成分表示の厳格化
アレルゲン表示が義務化され、太字や下線などで強調した表現が必須となります。また、栄養成分表示の必須項目に「糖類」「飽和脂肪酸」が追加され、「子供及び青少年は塩分・脂質・糖分の過剰摂取を避けるべき」という注意文言の表示も義務化されました。
●生産日表示の厳格化
これまでは賞味期限が「1年以内」の食品は生産日(製造日)の表示が不要とされていましたが、新制度では賞味期限「6か月以内」の食品のみ生産日表示が不要、つまり、賞味期限が6か月を超える食品については生産日の表示が必要となりました。表示順についても「年月日」方式に統一され、表示の誤認・混乱を防止する工夫が施されています。
●デジタルラベル対応
紙ラベルに加え、QRコード等などのデジタルラベルによる表示も正式に認められ、電子的情報提供が可能になりました。
EU
●包装・包装廃棄物規則 Regulation(PPWR)
EUの包装・包装廃棄物規則 Regulation(PPWR:Packaging and Packaging Waste Regulation)が2025年2月に発効されました。2026年8月12日以降、段階的に義務化されていきます。
具体的には、過度な包装の禁止、使用済み包装の回収・再利用の仕組み導入、環境負荷低減に資する情報表示(例:リサイクルマーク、分別方法表示)といった内容が含まれています。
●食品接触材料規制
食品接触材料規制が2025年3月に改正され、プラスチックや再生プラスチックを中心に食品と直接触れる容器・包装等の規制が強化されました。
食品接触材料の容器や包装には、用途(「食品用」等)や専用シンボルのラベル表示が義務付けられるほか、特定の使用条件(加熱や冷凍の可否等)がある場合はそれらを明確に表示することが必須となります。