2027年半ばに予定されている新Nutri-Grade制度は、「飲料だけの制度」から、塩分・脂質の多い加工食品全体を視野に入れた仕組みへと広がります。シンガポール向けに醤油や即席麺を輸出されている企業にとっては、「どの単位で評価され、どの数値をクリアすればよいのか」を早めに把握しておくことが重要になります。
シンガポール新Nutri-Gradeに関するコラムの第2回目である今回は、シンガポールの新Nutri-Gradeについて、実務的側面から、例を交えながら、少し具体的に計算方法などをみていきたいと思います。
1. 評価の単位:100gか、1食か
新Nutri-Grade(SSSIO)では、まず「どの単位で評価される製品なのか」を押さえることが出発点になります。
●100g/100ml あたりで評価
食塩、ソース類(醤油・ケチャップ・マヨネーズ等)、調味料・ペースト、食用油など。
●1食(serving)あたりで評価
即席麺(カップ麺・袋麺など、麺+スープがセットの製品)。
飲料は従来通り100mlあたりの評価ですが、SSSIOではサブカテゴリーごとに「100g基準」と「1食基準」が混在します。
特に即席麺では、麺とスープを合わせた「1食あたり」のナトリウム量が基準となるため、レシピだけでなくパッケージサイズ(内容量)の設計もグレードに直結します。
2. 基本ロジック:一番悪い栄養素を最終グレードとして表示
新制度では、対象製品を23のサブカテゴリーのいずれかに分類したうえで、次の3つの栄養素で評価されることになります。
- ナトリウム(食塩相当量)
- 糖
- 飽和脂肪
手順は共通で、以下のような流れになります。
- サブカテゴリーを特定する(例:Dark soya sauce、Instant noodles with soup など)。
- 基準単位(100g/100ml または 1食)あたりのナトリウム・糖・飽和脂肪を算出する。
- HPB仕様書の閾値表と照合し、栄養素ごとにA~Dの暫定グレードを判定する。
- 3つのうち「最も悪いグレード」が、その製品のNutri-Gradeとなる。
例えば、あるソースで「ナトリウムB・糖A・飽和脂肪A」であれば、最終評価はBになります。
逆に、糖がAでもナトリウムがDであれば、その製品は全体としてD評価になります。
【補足】
AからDのグレードがどのような意味をもつのか少しわかりにくいかもしれませんので、補足しておきます。
新Nutri-Gradeでは、ナトリウム・糖・飽和脂肪の3つについて、それぞれA~Dのグレードが付くのですが、Aが「栄養素 of concern の含有量が最も少ないレンジ」、Dが「同じ栄養素の含有量が最も多いレンジ」という位置づけです。つまり、A→Dの順に含有量が多く含まれているという順番になります。
3. 醤油のイメージ:Dark Soya Sauce の閾値(しきいち)
醤油などのソース類は、多くが「100gあたり」の数値で評価されます。
HPBの仕様書では、濃口醤油に近い「Dark soya sauce」について、ナトリウムと糖のA~Dの閾値が次のように定められています。(ちなみにDark soya sauceは飽和脂肪が閾値としては設定されていません)
- ナトリウム(mg/100g)
- A:3,000mg 以下
- B:>3,000 ~ 6,000mg
- C:>6,000 ~ 8,500mg
- D:>8,500mg
- 糖(g/100g)
- A・B:25g 以下
- C:>25 ~ 43g
- D:>43g
計算の流れとしては次の通りとなります。
例:ある醤油の分析値が
・ナトリウム:5,500mg/100g
・糖:10g/100g
この場合、ナトリウムは「3,000~6,000mg」間に入るのでグレードは「B」、糖は25g以下なのでグレードは「A」となるため、最終的なNutri-Gradeは「B」となります。
日本の一般的な濃口醤油は、5,000~6,000mg/100g前後のナトリウムを含む製品が多く、このカテゴリーではB~C評価に位置するケースが多いと見込まれます。
4. 即席麺のイメージ:麺+スープ「1食」で考える
即席麺は、「麺+スープ+かやくを含めた1食全体」が評価対象となります。
即席麺(Instant noodles)は、「麺+スープ+かやくを含めた1食全体」がNutri-Gradeの評価対象となります。 HPB仕様書では、Instant noodles with soup などのサブカテゴリーごとに、ナトリウム・糖・飽和脂肪の3つについてA~Dのしきい値が設定されており、この表にもとづいてグレードを判定します。
代表的な「Instant noodles with soup」の閾値(100gあたり)であれば、例えば次のように整理されています。
- ナトリウム(mg/100g)
- A:1,400mg 以下
- B:>1,400 ~ 1,800mg
- C:>1,800 ~ 2,200mg
- D:>2,200mg
- 糖(g/100g)
- A・B:5g 以下
- C:>5 ~ 8g
- D:>8g
- 飽和脂肪(g/100g)
- A:2.0g 以下
- B:>2.0 ~ 4.0g
- C:>4.0 ~ 6.0g
- D:>6.0g
即席麺は「ナトリウム・糖・飽和脂肪の3つすべて」で評価され、3つのうち最も数値レンジが重いグレードが、その製品の最終的なNutri-Gradeとなる仕組みです。
実務では、まず日本国内で一般的に用いられている「調理後1食あたり」または「100gあたり」の栄養成分表示を起点に、次のような流れで整理する形になると思われます。
- 「調理後1食あたり」または「100gあたり」の栄養成分表示から、
- ナトリウム(または食塩相当量)
- 糖(炭水化物のうち糖質)
- 脂質・飽和脂肪酸 の値を把握する。
- 必要に応じて、食塩相当量からナトリウムへ換算し(例:食塩相当量からナトリウム換算)、HPB仕様書の「Instant noodles」のしきい値表に当てはめて、栄養素ごとにA~Dを判定する。hpb.gov+1
- ナトリウム・糖・飽和脂肪の3つのうち、最も重い(Dに近い)グレードを、その製品の最終Nutri-Gradeとして採用する。
計算のイメージは、例えば次のようになります。
例:ある即席麺の栄養成分表示(調理後1食あたり)が
・内容量:合計 100g
・ナトリウム:2,500mg/1食
・糖:4.0g/1食
・飽和脂肪:2.0g/1食
とします。
この場合、100gあたりでも同じ数値となるため、ナトリウム 2,500mg/100g を「Instant noodles」のしきい値表に当てはめると、「2,200mg超」に該当し、ナトリウムの評価はDとなります。 糖4.0g/100gは上記レンジではA・B、飽和脂肪2.0g/100gもAに相当し得ますが、3つのうち最も数値レンジが重いグレードがDであるため、この製品全体のNutri-GradeはD評価となります。
海外の調査でも、即席麺1食あたりのナトリウムが1,500~2,400mg程度の製品が多いことが報告されており、日本のカップ麺でも2,000mg前後となる例は少なくありません。 この水準からB評価(よりナトリウムが低いレンジ)を目指すことを検討されるのでしたら、スープの塩分設計や麺量・油脂量の見直しなど、ナトリウムだけでなく脂質も含めたレシピとパッケージ全体の再設計が必要となる場面が出てくるかもしれません。
5. 「コールアウト表示」という新しい情報開示
新Nutri-Gradeの特徴的なルールとして、「なぜそのグレードになったのか」をマーク内で明示する“コールアウト表示”があります。
C・D評価の製品では、Nutri-Gradeマークに「High in Sodium」など、評価を押し下げている栄養素がテキストで表示されます(複数ある場合は、ナトリウム>糖>飽和脂肪の優先順位)。
あわせて、グレードC・Dの製品は前面へのNutri-Gradeマーク表示が義務づけられ、グレードDはテレビやオンラインを含む広告禁止、グレードCも広告時のマーク表示義務など、飲料と同様の広告規制が適用される見込みです。
※A, Bグレードについては表示義務およびパッケージ前面への表示義務はないようです。ただし、メーカー側がAやBを取得している場合、注意栄養素の数値が低い「ヘルシーな商品」であることをアピールするためにあえて自主的に表示することはもちろん可能です。
6. 2027年に向けて、今からはじめる「現状把握」
特に取り扱い商品数の多い商社の実務担当の皆様においては、2027年の施行に向けて以下のような対応を早めに準備し始めることが必要になると思われます。
- 自社製品を23のサブカテゴリーにマッピングし、それぞれのナトリウム・糖・飽和脂肪のしきい値を整理する。
- 最新レシピや分析値にもとづき、「100g/100ml」または「1食」あたりの数値を算出し、A~Dの暫定グレードと最終グレードをシミュレーションする。
- C・Dとなる見込みの製品については、処方改良とラベル変更のリードタイムを踏まえたスケジュールを作成する。
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