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米国FOPラベルの行方(パブリックコメントから今後の展開を推察する)

FOP-label-united-states

米国における「食と健康」政策の大きな転換点として注目されている、パッケージ前面(Front-of-Package, FOP)の栄養表示義務化。肥満や慢性疾患の増加を背景に、消費者が一目で健康的な選択をできるようにするというこの取り組みは、米国食品医薬品局(FDA)によって着々と進められています。

2025年1月16日にFDAはこのFOPに関する規則案(NPRM)を発表し、同年7月15日をもってパブリックコメント(意見公募)期間が締め切られました。現在、FDAは集まった膨大な意見を精査し、最終規則の策定作業に入っています。2027年の施行開始を目標としていますが、このコメント期間で示された多様な意見と、提案されているコンプライアンス期間を鑑みると、そのスケジュールは多少後ろ倒しになる可能性もあるのかもしれません。

本コラムでは、パブリックコメントで示された主要な論点を分析し、2026年5月に発表が予定されている最終規則がどのような「落としどころ」になりそうか、あくまでも予測ベースで、その着地点を考察してみたいと思います。

FDAが提示した「Nutrition Info box」案

米国FOPラベル制度の背景

米国FDAが2027年施行予定として検討中のFOPラベルは、主に消費者の健康改善、肥満や慢性疾患の予防を目的として提案、検討が開始されました。この制度は、食品購入時に一目で主要な栄養成分の情報にアクセスできるよう、従来の成分表示(Nutrition Facts)に加え、パッケージ前面に簡潔な栄養概要を義務付けるものです。

制度の概要とデザイン

多くの消費者が期待し、また中南米諸国で効果を上げているような「赤・黄・青」の信号機(トラフィックライト)や、「糖分 高(HIGH IN SUGAR)」といった黒い八角形(オクタゴン)の「警告」ラベルは、今回FDAの案としては採用されませんでした。

FDAが提案したのは、「Nutrition Info box」と呼ばれる白黒のシンプルな情報ボックスです。

  • 表示対象: 飽和脂肪酸、ナトリウム、添加糖類 の3つ。
  • 表示方法: 1食あたりの%DV(1日摂取目安量に対する割合)を記載。
  • 解釈的表示: %DVに基づき、「Low」(5%以下)、「Med」(6~19%)、「High」(20%以上)という3段階の解釈的文言を併記する。
xample Nutrition Info Box Modified for Aggregate Display

FDAは、このデザインが消費者テストにおいて「最も消費者の理解を助けた」と説明しています。これは、「警告ラベル」のような「強い表現」を避けつつ、栄養情報を解釈して提示するという、絶妙なバランス感覚を反映した案といえるかもしれません。

パブリックコメントで出された主な意見

7月15日に締め切られたパブリックコメントでは、このFDA案をめぐり、利害関係者から全く異なるベクトルの批判が噴出しました。最終規則を予測する上で、この「両極からの圧力」が鍵となりそうです。

A. 公衆衛生・消費者団体:「これでは弱すぎる」

米国の消費者団体(CSPI)や栄養学の専門家からは、FDAの案に対して「失望」の声が上がっています。

彼らの主張は一貫しており、「警告(Warning)」こそが消費者の行動変容を促す、という点です。彼らが理想としたのは、チリなどで導入され、不健康な食品の売上を実際に減少させた強力な「警告ラベル」でした。

FDAの「Nutrition Info box」案は、白黒でデザインも目立たず、既存の業界団体(Consumer Brands Associationなど)が推進してきた自主的な表示(Facts Up Front)と大差がない、と批判されています。「Med(中間)」という表示が、消費者に「適度に良い」という誤った印象を与える可能性も指摘されており、より強力な表示を求める声が多数寄せられました。

B. 食品業界・法務団体:「法的権限の逸脱」と「非現実的な基準」

一方、食品業界からは、当然ながら強い反対と懸念が示されました。

第一に、業界が推進する自主的な「Facts Up Front」(ポジティブな栄養素=タンパク質や食物繊維も併記できる)ではなく、ネガティブな3つの栄養素のみを「義務化」することへの反発です。

第二に、より根本的な問題として、ワシントン法務財団(WLF)などは、「そもそもFDAは、このような解釈的なFOPラベルを義務化する法的権限(Statutory Authority)を持っていない」という意見を提出しています。1990年の法律(NLEA)で定められたのは、裏面の「Nutrition Facts Panel」であり、前面への解釈的表示の義務化は、議会の承認を超えた権限の逸脱である、という主張です。これは状況によっては、最終規則が発表された後、法廷闘争に持ち込まれることを示唆する重要なポイントかもしれません。

また、イタリアのチーズ業界などからは、「チーズや生ハムのような伝統的で健康的な食品が、塩分や脂肪分のみを理由に『High』と表示され、消費者に誤解を与える」という技術的な反発も出ています。

予測される最終規則

予測1:デザインは「原案維持」が濃厚

FDAが、今からデザインを「警告ラベル」や「信号機」に大幅変更する可能性は極めて低いでしょう。なぜなら、FDAの「Nutrition Info box」案こそが、前述した「法的権限の逸脱」という訴訟に対する最も有力な防御策だからです。

「これは消費者の購入を妨げる『警告』ではなく、裏面の栄養成分表示を消費者にわかりやすく『解釈』して提示する、純粋な情報提供である」という理屈で、FDAはこうした法的な課題にも対応できる予防線を張るものと思われます。

予測2:タイムライン

 1. 最終規則の発表: 最新の予測では、最終規則の発表は2026年5月とされています。

 2. 提案された猶予期間: FDAの規則案では、最終規則の発効から大企業(年間売上1000万ドル
   以上)は3年間、中小企業は4年間のコンプライアンス(対応)猶予期間を設ける、と明記さ
   れています。

 3. 現実的な施行日: 2026年5月に最終規則が発表され、そこから3年間の猶予期間が適用され
   ると、大企業の対応期限は最短でも2029年の夏頃となります。

当初のFDAの予定であったであった「2027年施行」は、FDA自身が提案している猶予期間によって、厳密にいうと、すでにその前提は崩れてしまっています。

さらに、最終規則の発表後、食品業界団体が差し止めを求めて提訴することも視野に入れなければなりません。この法廷闘争が長引けば、施行はさらに1〜2年遅れ、2030年を超える可能性も十分にあるでしょう。

結論─コラムまとめ

パブリックコメント期間を経て、米国のFOPラベルは、「強力な警告」を求める公衆衛生側と、「権限の逸脱」を主張する産業側の板挟みとなりました。

FDAが着地させる最終規則は、恐らく「Nutrition Info box」原案を維持しつつ、チーズなど一部の食品カテゴリに技術的な免除・特例を設ける」という形になる線が濃厚です。

そして、食品輸出事業者やラベル管理者が今注目すべきは、デザインの是非よりも「タイムライン」です。現状世界的に見ても多くの国がFOPラベルを導入、または検討しており、米国においてもFOPラベルの導入はほぼ確定路線のように思われます。そして、現時点では施行は2027年となってはいますが、猶予期間を考慮すると実際の施行日は最短で2029年、遅ければ2030年以降となることがほぼ確定してます。

FOPラベルは従来のパッケージにデザインに大きな変化、変更をもたらす重要な改革だけに、準備期間も相当な時間となるものと思われます。食品輸出業者様は今後の動向を注意深く監視し、まだ少し時間的猶予のあるうちに、できるだけ早期に準備を始めることが必要となりそうです。

本コラムでも、進捗がありしだい、最新動向をお知らせする予定です。


食品表示規則の変更は、食品を輸出する事業者の皆様にとって重要な課題です。主要国では、栄養表示の義務化やアレルゲン表示の厳格化、リサイクルマークの表示やNutri-Scoreの表示義務化など、新たな規則が次々と施行されています。

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※本コラムは、その内容、正確性を保証するものではありません。また、また、規則改正やポイントは今後も適宜アップデートされるため、各自にて最新動向の確認を推奨いたします。

著者情報

SYGNET
株式会社シグネット広報

株式会社シグネット(SYGNET Inc.)が運営する広報・情報発信チームです。世界各国で進む食品表示規則の最新トレンドや、今後予定されている制度改正のポイントをわかりやすくお届けしています。輸出実務に直結するラベル関連の最新情報を中心に、長年の実務経験と知見を活かし、食品貿易に携わる事業者の皆様の海外展開を支援する専門的なコラムを定期的に発信しています。

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